10月1日、西東京市議会第3回定例会が閉会しました。毎年この時期は決算審査が行われます。いつものように議決結果一覧と、賛否の分かれた主なものについてその内容をお知らせします。
議案第55号 令和7年度西東京市一般会計補正予算(第5号)の専決処分について
第3号補正予算の議決を受けて進めていた、定額減税補足給付金給付事業の事務を進める中で、本来含めるべき給付対象者を含めていなかったことが判明し、予算不足が生じたために編成された補正予算です。迅速な給付のために市長の専決処分という形で進められ、それを承認するかどうかを予算特別委員会を開いて審査しました。国から示されたファイルレイアウトが複雑だったという説明もありましたが、職員の理解が不十分だったとの弁もありました。稲垣議員、大林議員が退席、その他議場にいた議員は全員賛成という形になりました。
議案第75号 令和6年度西東京市一般会計歳入歳出決算の認定について
令和6年度の予算執行、事業の内容に問題がなかったかを審査する第3回定例会最大の議案と言えるものです。私が質疑した内容についてはこちらをご参照ください。
私は賛成する立場を取りましたが、何も問題がなかったということではありません。給食費無償化の実現は大きかったですが、老朽化した小学校の高架水槽の破損、給食への異物混入など様々な問題も発生した年度でした。自由に使える市の貯金(財政調整基金)の減少も課題です。この記事の最後に本会議で行った討論の原稿を掲載しますので、ご覧ください。
なお、共産党の3人と無所属の納田議員が反対。共産党は市独自の若者支援策やPFAS検査が実施されなかったことなどを、納田議員は単年度/実質単年度収支の3年連続赤字や経常収支比率95.5%など財政の厳しさに対する認識の甘さなどを、それぞれ反対の理由として述べていました。
議案第81号 令和7年度西東京市一般会計補正予算(第7号)
新型コロナワクチンの定期接種に対し、東京都が補助を実施することに伴う補正予算です。長井議員のみ反対しました。
陳情第14号 田無庁舎・保谷庁舎の洋式トイレを温水洗浄便座化にする陳情
私が所属する企画総務委員会で審査されました。委員会の質疑では、すでに市として田無第二庁舎や分庁舎も含め、温水洗浄便座化の計画を持っており、陳情者の願意は叶う見込みだということが確認されました。委員会は陳情の取扱いを巡って休憩になり、その間に、「陳情というのは執行部がやる予定のないものについて、市民の声を受けて議会としてもやるべしと要求するもので、すでに願意が叶っているものを改めて議会が執行部に求めるのはおかしい」という趣旨の議論がありました。
私としては、その理屈も一つの考え方として理解する一方、陳情者がそのような市の計画を熟知するのは難しいし、陳情の趣旨は間違っていないし、反対するのは違うのではないかと考え、最終的に採決に加わらない、退席という判断をしました。
以下、「議案第75号 令和6年度西東京市一般会計歳入歳出決算の認定について」に対する私の賛成討論の原稿を掲載します。
議案第75号 令和6年度西東京市一般会計歳入歳出決算の認定について、賛成の立場で討論いたします。
令和6年度一般会計歳入決算額は、871億129万9520円、歳出決算額は、844億3576万9536円となり、いずれも前年度を上回りました。実質収支額は25億2284万6984円の黒字、単年度収支額は3億1392万985円の赤字となり、令和4年度から3年連続の赤字となりました。
過去に何度も指摘している通り、何一つ課題のない、完璧な予算・決算はまずありません。令和6年度の行政運営、事務執行にあっても、反省すべき点は多々あるのではないかと冒頭申し上げておきます。
令和6年度を振り返ってみますと、特に4月に就任した教育長にとっては、まさに試練の1年間だったのではないでしょうか。まずは、特別支援学級の教室不足への対応として、就任早々にそれまでの方針を転換して、東小学校の教室等転用改修工事を行うとしたことです。これにより特別支援学級の教室確保と普通教室の環境改善が図られる一方、家庭科室がなくなるという問題が生じました。この件は、令和5年度中の対応に課題があったとして、令和5年度決算の認定に反対する理由の一つにも挙げたものです。
耐用年数を大きく超過していた保谷小学校の高架水槽が破損し、緊急に取替工事が必要となった件では、仮設トイレ等のリースや、給食調理ができない間の代替弁当の手配が必要となりました。
そして、10月に同じ給食調理事業者が立て続けに異物混入事故を起こした件では、児童生徒や保護者に不安を与えただけでなく、これを契機に当該事業者が令和7年度の委託契約を辞退し、その後の入札不調により4月からの給食調理ができないという事態につながりました。
こうした様々な課題が発生する中、西東京市の子どもたちのためにどのような対応ができるか、と最善の策を模索し続けてきたことについて、一定の評価はしたいと思います。
しかしながら、市長部局と教育委員会の間で、十分な意思疎通と情報共有ができていたのかという点については、反省すべき課題だったと指摘させていただきます。田無第三中学校を皮切りとして、学校を核としたまちづくりが進められようとしているところでありますので、令和6年度の反省をしっかりと生かしていただくよう、市長、教育長に改めて求めます。
令和6年度予算の目玉の一つであったのが、小中学校の給食費無償化でした。安全でおいしい給食を提供することで子どもの育ちを支えると共に、子育て世帯への家計支援としても大いに意義があったものと思います。財源については、国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金等を充当したこともあり、当初予算段階で想定したよりも一般財源負担は大幅に抑えられましたが、継続的な事業としていくために、引き続き国や東京都の動向に注目しつつ、国の責任において取り組んでいくよう求めます。
物価高騰への対応として実施されたキャッシュレス決済ポイント還元事業については、当初予算の討論において、2億8千万円余りの予算計上は、他の事業と比較してバランスに欠けているのではないか、前年度に行った多額の予備費の充用を繰り返してはならないと厳しく指摘していました。結果、既定予算内で収まったことには安どしています。また、期間を通じて利用実績が概ね一定で推移したことは、日常の家計負担の軽減に寄与したものと捉えます。
小学校10校、中学校5校のマンホールトイレの設計、小学校2校のマンホールトイレの設置工事が実施されたことは、避難所のトイレ環境の充実に向けた取組として評価しますが、実際の利用の場面で、障害のある方も含めて問題なく使用できるのか、動線については今後の訓練の中で検討していく課題だという答弁もありました。今日にも、明日にも起こるかもしれない災害への備えを、さらに充実させていくことを求めます。
学童クラブの過密化解消に向けた取り組みとして実施されたタイムシェア事業が3校で実施され、一定の効果があったことを確認しました。今年度は、さらに4校拡充されたと承知しています。タイムシェア事業はあくまでも一時的な対応であることを踏まえ、引き続き、子どもの放課後の居場所確保に努めていただくようお願いします。
若者への支援については、市民協働企画提案事業補助金に、U29チャレンジ部門が創設されたことを評価しますが、附帯決議で求めた「西東京市独自の経済的支援等の早期実施」がいまだに実現していないことは大変残念です。現在、若者ミーティングの場において、次世代を担う若者・学生等の声を反映した内容が検討されているものと承知していますので、今後に注目致します。
市の魅力発信につながる取組としては、PR動画の制作が行われたことや、職員向けの動画作成研修が新たに開始されたことを確認しました。引き続き、市内外に西東京市の魅力を発信し、住んでよかった、住み続けたいと思える西東京市になるよう、期待します。
一方、主要な財務比率について改めて確認すると、財政の硬直化の度合いを示す経常収支比率は前年度比2.2ポイント上昇の95.5%となり、都内類似団体平均、都内26市平均を上回る状態、財政調整基金は前年度比5億3419万9千円減の37億335万円となり、行革大綱の目標値である標準財政規模の10%を下回る8.7%となっています。非常に厳しい数字であると言わざるを得ません。
人件費の増加や、いまだ続く物価高騰への対応などに加え、公共施設やインフラ更新が今後も続くことを踏まえれば、本市の財政事情はますます厳しさを増すことが想定されます。これまで以上に財源の確保や予算の徹底した執行管理が求められることを最後に指摘して、令和6年度西東京市一般会計歳入歳出決算の認定についての賛成討論といたします。