1月8日は市議会議長会主催の「2040未来ビジョン出前セミナー in 調布」に参加。山梨県立大学教授の西澤哲氏の講演で、テーマは「児童虐待をめぐる諸課題と地域の役割」でした。ちなみにタイトルの2040とは、高齢者人口が最大となると見込まれる2040年を指しており、今後課題となるテーマについての知識を深めようというのが開催趣旨とのことです。
90分を超える長い講演も、関西人特有の?常に笑いを織り交ぜながらの話だったので飽きることなく最後まで聞くことができ、非常に勉強になりました。
最初に話されたのは「虐待」と「しつけ」の境目について。
この2つは全く異質のもので、接点はない。従って境目というものは存在しない。児童虐待とは「child abuse」の訳語であり、abuseとは薬物乱用、アルコール乱用などと使われる「乱用」という意味。それに沿って訳せば「child abuse」は「子ども乱用」となる。言っても聞かない子どもに叩いてでも教えるのが親の務めと言いつつ、実際には子どもの行動をコントロールできたという親の達成感・有能感を得るのが目的となっている。
次にしつけの本質と体罰の有効性について。
しつけの語源の一つは習慣化を意味する「習気(じっけ)」。不快な状態から自力では快の状態に戻れない乳幼児に対して、養育者が手助けをする(ex.泣いている子をあやすなど)ことがしつけ。これを繰り返すことで3歳頃にはセルフコントロールする力が形成される。体罰は即時的な効果があるとしても、行動をやめさせるためには常に罰が必要になり、次第に痛みや苦痛への「慣れ」が生じてしまう。自律性とは逆であり、体罰を受けた子どもには生理的調節、感情・感覚調節、行動調節に障害が生じる。
虐待が増加しているのか否かについて。
児相への虐待通報件数は、1990年の約1000件から2018年には約16万件に増加。顕在化説(もともとあったのが明るみになった)と実質増加説がある。どちらもエビデンスは示せないが、実質増加説の傍証として、社会的養護を必要とする子どもの増加(保護した子どもの行き場がないため一時保護を控えている)、児童福祉法28条審判(重症例)の増加がある。この増加に関連する可能性のある指標として、若年(10代~20代前半)の婚姻に占める妊娠先行結婚(できちゃった婚)の多さと離婚率の高さ、その結果若年母子家庭が増え、母子家庭の53%が相対的貧困線以下の所得であることが挙げられる。
最後に基礎自治体の役割について。
家庭支援が自治体の仕事。在宅支援の中心機関である地域支援拠点の整備、要保護児童対策地域協議会の実質機能化が求められる。また、地域の子育ち(子育てではなく子育ち)支援の拡充として、保育所の機能見直し、学童保育の活性化など。
会場には都内の各自治体の議員が集まっており、面識のある議員の顔もあちこちにありましたが、見る限り西東京市からの参加は私だけだったようです。それぞれお忙しかったのだと思いますが、非常にいいお話だったので、多くの議員に聞いてもらいたかったなと思います。